相続した家は、売り方を決める前に資料を集める

相続した空き家の売却では、売値だけでなく、名義、相続人の合意、建物の状態、税の特例を確認する必要があります。解体や賃貸を先に進めると、予定していた特例の条件を満たさなくなることもあります。最初に売却までの手順を整理し、税務署・税理士、司法書士、不動産会社の役割を分けて相談しましょう。

この記事は2026年10月5日に確認した国税庁・法務省の情報に基づく一般的な案内です。個別の物件への適用判定は、取得経緯や利用履歴を確認して行います。「相続した空き家」というだけで特別控除を受けられるわけではありません。

売却までの基本的な流れ

1. 不動産と相続関係を確認する

登記事項証明書、固定資産税の通知、遺言書、過去の売買契約書などを探します。土地と建物の名義が同じとは限りません。共有、抵当権、未登記の建物、複数の土地が含まれていないかも確認し、分からない点は専門家へ渡す調査項目として残します。

2. 取得する人を整理して相続登記を進める

相続関係と遺言の内容を確認し、必要な場合は遺産分割の協議を行います。2024年4月から相続登記の申請が義務化されており、基本的には相続による所有権取得を知った日から3年以内の申請が必要です。売却時期が未定でも、登記の期限は別に確認します。

相続人申告登記は申請義務を履行するための簡易な仕組みですが、それだけで売却に必要な所有権の登記が完了するものではありません。詳しくは相続登記義務化と空き家で説明しています。

3. 現況のまま売る案と解体する案を比較する

不動産会社に査定を依頼し、建物を使う買主を探す案と、更地にして売る案の条件を比べます。工事代金だけでなく、税の特例、引渡し日、解体完了を証明する書類なども合わせて確認します。買取相場と査定のポイントも判断材料になります。

4. 契約、引渡し、申告の準備を進める

残置物、境界、修繕、解体などの負担者を契約前に整理します。売買契約書、工事関係書類、領収書は申告に使う可能性があるため保管します。引渡し後にも必要な確認が残ることを想定し、売却の担当者と税務の担当者で期限を共有しましょう。

売却にかかる税金の考え方

土地・建物の売却では、売った金額から取得費と譲渡費用を差し引いて譲渡所得を計算し、適用できる特別控除があればさらに控除します。売却代金の全額が利益になるわけでも、受け取った代金がそのまま課税額になるわけでもありません。

相続した土地・建物の取得費と取得時期は、原則として被相続人の取得費・取得時期を引き継ぎます。相続した日の価格や相続税評価額を、そのまま購入代金として使うものではありません。建物は減価償却に相当する額などの調整もあるため、古い契約書を見つけたら税理士へ確認しましょう。

取得費が分からないときの計算方法や、相続税の一部を取得費に加算する特例もあります。ただし、空き家の特別控除と併用できない特例があるため、名称だけで選ばず、どの方法が適用できるかを資料に基づいて比較します。

被相続人の居住用財産の3,000万円特別控除

国税庁の「No.3306」は、一定の条件を満たす相続空き家の譲渡所得から最高3,000万円を控除できる制度を案内しています。税額が3,000万円減る制度ではありません。2024年1月1日以後の譲渡で、対象の家屋と敷地等を取得した相続人が3人以上の場合、上限は各人2,000万円です。

建物と居住状況の要件

  • 1981年5月31日以前に建築された家屋であること
  • 区分所有建物として登記されている建物ではないこと
  • 原則として相続直前まで被相続人が住み、ほかに居住者がいなかったこと
  • 売った人が相続または遺贈で対象の家屋と敷地等を取得した相続人であること

老人ホーム等への入所により相続直前に住んでいなかった場合にも、一定の条件を満たせば対象になることがあります。要介護認定、入所前後の利用状況などが関係するため、国税庁の「No.3307」も確認してください。マンションや貸していた家を同じ条件で扱うことはできません。

売却期限と金額の要件

制度の対象期間は2027年12月31日までです。これに加えて、相続開始の日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る必要があります。両方の期限を満たすか確認してください。売却代金は1億円以下であることが要件です。

一体として使われていた土地等を分けて売る場合や、他の相続人が別に売る場合にも、代金を合算して判定する規定があります。自分の持分の金額だけを見て適用できると判断しないことが大切です。

耐震・解体と利用履歴の要件

建物を残して売る場合は一定の耐震基準、解体後に敷地を売る場合は取壊しや土地利用の条件を確認します。相続から売却までの間に居住、貸付け、事業に使っていないことなども要件になります。解体後に駐車場などとして利用する計画も、実行前に税務署へ確認しましょう。

2024年1月1日以後の譲渡には、売却後、翌年2月15日までに耐震基準への適合や家屋全部の取壊し等を行う方法もあります。買主が工事をする契約では、完了期限、証明資料の受渡し、遅れた場合の扱いまで確認する必要があります。

ほかの特例との重複、同じ被相続人の財産についての適用歴、親子や夫婦など特別の関係がある相手への売却にも制限があります。ここに挙げた項目だけで適用を確約せず、国税庁の要件全体と物件の履歴を照合してください。

特例を使うには確定申告が必要

控除を使って税額が出ない見込みでも、適用を受けるには必要書類を添えた確定申告が必要です。物件所在地の市区町村が交付する被相続人居住用家屋等確認書、登記に関する資料、売買契約書、耐震や解体を示す資料などを、売却方法に応じて準備します。

自治体の確認書の交付と税の特例の適用判定は別です。確認書だけで税務上の条件がすべて満たされたと考えず、申告に必要な書類と期限を税務署などに確認しましょう。

買う側も売主の期限を共有する

不動産会社、買取再販会社、工務店は、売主が税の特例を検討しているかを早めに聞き、工事計画と引渡し条件を調整します。税務判断を営業担当だけで断定せず、税理士等の確認結果を踏まえて進めることが重要です。

調査地域を選ぶには地域別の空き家データを利用できます。アキヤーは空き家候補の調査データを提供し、仲介や税務判断は行いません。調査内容と費用はサービス案内と料金表をご覧ください。

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